多摩総合精神保健福祉センター広報援助課担当を囲んで学習・懇談会
出席者11名(うち会員10名)
会員から家族が利用した経験があるという声をよく耳にしているのが、多摩市中沢にある東京都立多摩総合精神保健福祉センター(略称:多摩総)です。ただ、時代や状況変化に伴って、多摩総が現在、機関として果たしている役割や具体的事業、施設の状況について、会員の理解が充分とまでは言えません。そこで、直接、現場の職員の方からお話を伺って懇談したいとお声がけをしたところ、快諾いただき、広報援助課のお二人(広報援助課長・広報計画担当課長代理)においでいただきました。
【広報援助課長のお話】
総合精神保健福祉センターは何をする機関?
法で設置が義務づけられている総合精神保健福祉センターの機能は、以下の2つの柱で展開されています。
(1)地域の支援機関(保健所や市役所、サービス提供事業所等の支援機関)に対するバックアップ(後方支援)として、関係機関への協力支援や職員対象研修等
(2)地域住民(都内3センターの各担当地域住民)に対する相談・広報・啓発等⇒ センターとは、世田谷区八幡山にある中部総合精神保健福祉センター、上野にある東部総合精神保健福祉センター、 多摩市にある多摩総合精神保健福祉センターで、基本的に1か所が 都民400~500万人をカバーしています。多摩総は、多摩地域全域を受け持っています。
多摩総の相談から利用までのプロセスについて
多摩総では、一連の流れに沿って、①こころの電話相談、②個別相談(新規面談)、③当事者集団療法(本人対象)、④家族教室(家族対象)という対応をしており、こころの問題についての相談やプログラム、公開講座等を実施しています。
①こころの電話相談
相談や事業への参加につながる最初の入り口であり、②⇒③もしくは④というプロセスになるため、まずは、月曜日~金曜日(年末年始を除く)9時~17時に、042-371-5560へ相談の電話を入れてください。
②個別相談
本人、家族、関係機関からの相談を受けています。「思春期・青年期相談」は、不登校、引きこもり、家庭内暴力、ネット・ゲーム依存、薬物乱用、摂食障害等の相談に対応しています。「依存症相談」は、東京都依存症相談拠点として、薬物、アルコール、ギャンブル等の相談に対応しています。それ以外の精神疾患、発達障害等の相談については、「一般相談」で対応しています。
③当事者集団療法(多摩地域在住の当事者対象)
思春期本人グループ(スポーツやゲームなど)、依存症再発予防プログラム
④家族教室(家族対象)
思春期・青年期家族教室、依存症家族教室(専門家の講師による講座等)
その他の事業について
◆思春期・青年期デイケア、ショートケア事業
会員から家族が利用したことがあるとよく聞くのが、デイケアです。主に中学卒業以降から概ね40歳程度の方までが利用対象で、統合失調症、発達障害、神経症、気分障害等の方を対象にしたプログラム構成です。
毎週、月・火・木・金曜日 の4日間で、デイケア(1日9:30~16:30)と、ショートケア(午前半日9:30 ~12:30 / 午後半日 13:30~16:30)の2タイプがあります。利用に際しては面談が必要で、主治医の診療情報提供書が必要です。
利用期間は原則1年6か月で、6か月ごとに更新手続きが必要です。継続利用が必要と判断された場合は最長2年間の利用が可能で、利用終了後も1年間のアフターケアがあり、社会生活のための支援と相談に応じてくれます。プログラムは 多摩総のホームページに掲載されています。
ちなみに、お話の後の懇談では、デイケア卒業後は、B型作業所につながる方が多く、学生は復学や専門学校につながっているケース等が多いという紹介がありました。また、個別に担当スタッフが付くので、スタッフとの良好なコミュニケーションが生まれ、デイケア終了後も継続したいという要望の発言がありましたが、そういった評価は職員には大変励みになりありがたいが、他地域や別部署への異動もあり、現実的には難しいということでした。
◆アウトリーチ支援事業について
この事業は、都の3センターがそれぞれの保健所と連携して訪問して支援を行う事業です。精神障害者の方、もしくはその疑いがある方で、受診や福祉サービスになかなか応じてくれない方を対象に、原則6か月間の支援です。保健所からの依頼により、短期間で多摩総の精神科医・看護師・福祉職・心理職等のチームが保健所とタッグを組んで、困難度が高い方を対象に総合的に働きかけを行うそうで、当事者本人もアウトリーチ支援の利用(訪問)を希望していることが原則となっています。利用を考えている場合は、当事者や家族からの直接的な依頼は受けられないので、まず保健所に相談してください。
◆精神障害者地域移行促進事、ピアサポーター事業
そのほか、入院中の精神障害者の円滑な地域への移行と、地域で安定した生活が送れるように体制整備を目指して、地域移行促進事業、ピアサポーター活用アドバイザーイザー事業を行っています。
また、グループホーム活用型ショートスティ事業、市町村への支援、地域移行に関係する職員や基幹相談支援センター職員に対する研修・会議を行っています。
【お話後の懇談】
講師のお話終了後の懇談では、「デイケア卒業後に担当職員とのコミュニケーションが引き続き可能か」「デイケア利用後の利用者の進路はどうなっているか?」との質問や、「以前あった多摩総のショートスティが無くなくなったが再開の目途は? また、親子相互に離れる時間を確保するためのショートスティのニーズがあるのに、家族会が運営する近隣のショートスティはいつもいっぱいで利用できないので、身近な所にショートスティ機能が必要な事を伝えてほしい」という話題も出ました。
自分で動くことが困難で、長期にわたり引きこもり状態の当事者の場合は、医師にも公的機関にもつながっていないので、親亡き後の今後への不安とその対応についても話題となりました。講師からは、「そういう場合、年金については社会労務士や法テラス等に相談する。引きこもりの当事者については、現在では、動物やスマホのゲーム等、様々な働きかけの手法で、当事者とコミュニケーションを図る訪問看護事業所も生まれてきているので、活用してみることもできる。当事者は無理でも、父母が公的な機関とつながっておくことが大切で、伴走者ができることで社会につながっている安心感が生まれる」と、他の機関も含めた現場の状況を踏まえて、丁寧に答えていただきました。今はアウトリーチ事業も始まったので、まず、親だけでも保健所につながる必要があるのではないかと思いながら、このやりとりを聞きました。
お話いただいた広報支援課長の穏やかで受容的な受け答えに、参加者も心を開き、いろいろな質問や疑問、自分の経験等を率直に出しあい、話し合うことができました。締めのご挨拶では、センターの広報を担っておられる課長代理から、多摩総のHPやこころの健康に関するリーフレレット作成、啓発などの都民への広報に関わる取り組みが紹介され、参加できなかった会員用にと、講演資料もたくさんいただきました。 当クラブへの温かい理解と配慮が伝わってくる実りあるひと時になりました。なお、会員で資料を希望される方は、学習交流会等においでの際に、受付にお申し出ください。
(M.F)
